僕はよく、「自分って、何でこんなにミスが多いんだろう」「他の人みたいに普通にできたらいいのに」と落ち込むことがあります。
でも以前、とある「説」を目にしてハッとしました。
発達障害の特性は、安心できる環境では「弱まる」ことがある。
えっ…?と思いました。つまり、僕の「うっかりミス」や「過剰な心配性」は、環境の影響が大きいのかもしれない。
今回は、この話を深掘りしてみます。
「環境しだいで変わる」って、どういうこと?
発達障害というと、「脳の特性だから変えられない」と思われがちです。たしかに、脳の構造や情報処理の傾向は基本的には変わりません。
でも、それが「困ったもの」として出るか、「気にならないレベル」で済むかは、環境によって大きく変わるといいます。
科学的な裏付けもあるらしい
- 「学校での研究(2017年)」では、ASDの子どもが「安心できる先生」や「失敗しても受け入れてくれるクラス」にいると、特性による問題行動が大きく減ったと報告されています。
- 「ニューロダイバーシティの立場」では、「特性」は社会との関わりの中で活かされたり、逆に困りごととして出たりすることがあると考えられています。
つまり、本人の特性は同じでも「周囲がどう関わるか」でまったく違った現れ方になるというのです。
過去を振り返ると、思い当たることがある
振り返ってみると、僕自身も「安心できる場所」では、不思議とミスが減ったり、無理なく行動できたりした経験があります。
- 厳しく監視されている状況では、焦ってパニックになってミスを連発する
- 「大丈夫、何かあったらフォローする」と言われる状況では、不思議と落ち着いて動ける
客観的に見ると「これが同じ人間なのか?」と驚くレベルで能力に大きな差が出るのです。
僕が本当に苦しかった職場体験
僕のこれまでの人生で、一番「これは自分には向いていない」と感じたのは、経理と人事労務の仕事でした。
経理では、とにかく事務作業の量が多く、常に小さな締め切りに追われる毎日。数字が合わないと、原因を突き止めるために多大な時間がかかります。なので「ミスをしてはいけない」というプレッシャーとの戦いでした。
人事労務は、他人の給料を扱う責任の重さがキツかった。給料の支払いが遅れると大問題になるので、仕事が詰まっていると休みも取りにくくなります。社会保険料など専門知識も必要で、こういった所も間違えれば色々な追加業務が発生します。あぁ、思い出すだけで頭が痛い(苦笑)
そして何より辛かったのが、上司の無理解。慣れない仕事で四苦八苦している僕に対して、上述したような「ミスしてもカバーできるから大丈夫」なんて声掛けは一度もなく、仕事が心配で残業を申請すると不機嫌な態度を取られました。
こういう人が相手だと「ミスしたら何を言われるか」という先行的な不安も大きくなります。結果、僕はミスに過敏になり、少しの仕事でもチェックを繰り返すようになり、仕事が終わらないという負のループにハマっていきました。
そんな環境では、自分を守ることも難しく、どんどん心が削られていきました。
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一度、社会保険料を間違えて引いてしまった時のこと。上司が「法律違反になる、すぐに対応しろ」と言ってきて、慌てて銀行に行ってお金をおろし、差分を本人に渡して、それを記録として残すために受領書も作って…という緊急対応をさせられました。契約していた社労士さんは「次の給料で調整すればOKだよ」と言っていたにも関わらずです。マジで、こういう上司の元では二度と仕事をしたくありません。
若手時代は周囲が寛容で働きやすかった
一方で、気持ちよく仕事ができていた時期もありました。それは、周囲の人が「ミスしても大丈夫」と言ってくれる環境でした。
特に思い出すのが、僕が20代〜30代前半だった頃の職場のことです。
当時の上司たちは、僕が少しくらいミスしても頭ごなしに責めることはせず「次から気をつければ大丈夫」と柔らかく対応してくれました。
それだけでなく、僕のちょっと変わったこだわりや、回り道のように見えるやり方にも、一定の理解を示してくれて「君のやり方でやってくれて良いよ」と受け入れてくれる空気がありました。
思えば、そんな環境では「うっかりミス」や「仕事への過剰な不安」といった特性はあまり出ていなかった気がします。たとえ発達に特性があっても「自分のやり方でやれば、結果は出せる」と信じて、前向きに働けたように思います。
でも、環境が変わった瞬間に
ところが、僕が30代後半に差しかかった頃、それまでの空気は一変します。(ちょうど、その頃に職場の異動もありました)
新しい上司は、効率重視・完璧主義・ミスに不寛容なタイプ。僕のやり方に一切耳を貸さず、些細なミスにも過剰に反応し、
「何故、そんな無駄な仕事をしている?」「皆がちゃんとやっているのに何故できない?」
といった言葉を日常的にぶつけてきました。
僕が当時、勤めていた会社には「誰のために作るのか良く分からない無駄な書類※」が沢山あり、そういう書類は常に後回しにしていたのですが、それが見つかってよく注意されました。(一応、後からまとめて作ったりはしていたんですけどね)
※例えば「車両の運行記録表」みたいなヤツです。誰も後から見ないのに、何月何日にどこに行って何km走ったかを記録する紙なんですが、こういうのが本当に沢山ありましたね。大企業病ってやつでしょうか。
当時の僕は、これまでとは比べものにならないほどにミスが増え、体調も崩れていきました。思えば、この時が僕の会社員としてのキャリアの「終わりの始まり」だった気がします。
僕が今、大切にしたいこと
このような経験もあって、今の僕は「どうやって働くか」よりも「どこで、誰と働くか」や「どんな関係性の中で働くか」こそが大事だと考えるようになりました。
僕のように、環境によって「特性が強く出たり、出なかったりする人」は少なくないはずです。
発達障害というのは、単なる“個人の問題”ではなく、環境との相互作用の中で現れるもの。それを身をもって感じています。
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世はまさに「大転職時代」ですから、僕みたいに「自分の特性を悪化させる」上司に出会ったらすぐに転職を考えても良いと思います。我慢しても何も変わりませんし、上司とバトルをするのは骨が折れます。僕も次にフルタイムに挑戦する時は、ここを一番大事にしようと思います。
参考にした資料
※以下、AIとの対話の中で今回の「説」のエビデンスとして提示してもらったものを掲示しておきます。
- 『The Power of Neurodiversity』Thomas Armstrong(2010)
- Journal of Autism and Developmental Disorders(2017)学校環境とASD児の問題行動に関する研究
- DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)における「機能障害は環境との相互作用で決まる」という考え方
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